オモダル・アヤカシコネ

日本神話に登場する兄妹の神。『古事記』において神世七代の第6代の神とされる

淤母陀琉神阿夜訶志古泥神(おもだるのかみ・あやかしこねのかみ)は、日本神話に登場するである。神武天皇は仍孫。

淤母陀琉神

神世七代 第6代
先代意富斗能地神
次代伊邪那岐神

神祇天津神
全名淤母陀琉神
別名面足尊、面足彦、面垂見尊
神社熊野速玉大社穏田神社
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阿夜訶志古泥神

神世七代 第6代
先代大斗乃弁神
次代伊邪那美神

神祇天津神
全名阿夜訶志古泥神
別名惶根尊、吾屋惶城根尊、吾屋橿城尊、吾忌橿城神、綾惶根尊、蚊雁姫尊、青橿城根尊
神社健男霜凝日子神社穏田神社
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概要

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古事記』では兄を淤母陀琉神、妹を阿夜訶志古泥神、『日本書紀』では兄を面足尊、妹を綾惶根尊(あやかしきねのみこと)と表記する。

『古事記』において神世七代の第6代の神とされ、兄淤母陀琉神が男神、妹阿夜訶志古泥神が女神である。オモダルは「完成した(=不足したところのない)」の意、アヤカシコネはそれを「あやにかしこし」と美称したもの。つまり、人体の完備を神格化した神である[1][2]

また淤母陀琉神は「淤母」は「面」、「陀琉」は「足る」と解して、名義を「男子の顔つきが満ち足りていること」とし、文脈や阿夜訶志古泥神との対応、また今日に残る性器崇拝から男根の様相に対する讚美からの命名と考えられる。阿夜訶志古泥神は「阿夜」は感動詞、「訶志古」は「畏し」の語幹、「泥」は人につける親称と解し、名義は「まあ、畏れ多い女子よ」とし、淤母陀琉神と同様の理由で、女陰のあらたかな霊能に対して恐懼することの表象と考えられる[3]


中世には、神仏習合により、神世七代の六代目であることから、仏教における、欲界六欲天の最高位である第六天魔王垂迹であるとされ、特に修験道で信奉された。明治神仏分離により、第六天魔王を祀るの多くは神社となり、「第六天神社」「胡録神社」「面足神社」などと改称した。

名称

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書名1組2組3組4組5組6組7組8組9組
古事記(男神)宇比地邇神角杙神意富斗能地神淤母陀流神伊邪那岐神
古事記(妹)須比智邇神活杙神大斗乃辧神阿夜訶志古泥神伊邪那美神
日本書紀本書(男神)泥土煮尊大戸之道尊(一云大戸之邊。亦云大戸摩彦尊・大富道尊)面足尊伊奘諾尊
日本書紀本書(妹)沙土煮尊大苫邊尊(大戸摩姫尊・大富邊尊)綾惶根尊吾屋惶根尊忌橿城尊青橿城根尊吾屋橿城尊伊奘冉尊
1書第1(男神)泥土煮尊角樴尊面足尊伊奘諾尊
1書第1(妹)沙土煮尊活樴尊惶足尊伊奘冉尊
1書第2(男神)天鏡尊天萬尊沫蕩尊伊奘諾尊
先代旧事本紀(男神)角樴尊(角龍魂尊)泥土煮尊(泥土根尊)大苫彦尊(大戸之道・大富道・大戸摩彦)青橿城根尊沫蕩尊面足尊伊弉諾尊
先代旧事本紀(妹)活樴尊沙土煮尊(沙土根尊)大苫邊尊(大戸之邊・大富邊・大戸摩姫)吾屋橿城根尊惶根尊蚊鴈姫尊伊弉冉尊
先代旧事本紀天三降尊天合尊(天鏡尊)天八百日尊天八十萬魂尊高皇產靈尊(亦名、高魂尊・高木命)
天書(男神)泥土根大苫彦面足彦伊弉諾尊
天書(女神)沙土根大苫姫橿城姫伊弉冊尊
天書紀(男神)泥土野尊大家宅尊懐寝尊伊弉諾尊
天書紀(女神)砂土野尊大衣見尊根心尊伊弉冊尊
上記(男神)うイぢにのみことつぬぐイのみことおおとのぢのみことおもだるのみことおおとぢのみことあをかしきねのみことあまのかかみのみことあわなぎのみこといざなぎのみこと
上記(妹)すイぢにのみこといくぐイのみことおおとのべのみことあやかしこねのみことおおとべのみことあゆかしきねのみことあめのよろづのみことあわなみのみこといざなみのみこと
宋史日本傳(男神)角龔魂尊汲津丹尊面垂見尊國常立尊天鑑尊天萬尊沫名杵尊伊弉諾尊

祀る神社

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脚注

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  1. ^ 倉野憲司『古事記・改版』
  2. ^ 國學院大學日本文化研究所『収縮版 神道事典』
  3. ^ 新潮日本古典集成 古事記

参考文献

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倉野憲司『古事記・改版』(岩波文庫1963年)國學院大學日本文化研究所『収縮版 神道事典』(弘文堂1999年

関連項目

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