ナノテラス

東北大学に建設された3GeV放射光施設

ナノテラス (NanoTerasu) とは、宮城県仙台市青葉区東北大学青葉山新キャンパスにある放射光施設である[4]。正式名称は3GeV高輝度放射光施設であり、東北放射光施設計画として計画が始まり、2024年4月1日に運用開始した[5][6][7]特定先端大型研究施設の共用の促進に関する法律(共用法)に云う特定放射光施設である。

ナノテラス(NanoTerasu)
ナノテラスの位置(仙台市中心部内)
ナノテラス
情報
施工鹿島建設[1]
事業主体
構造形式鉄骨造、一部鉄筋コンクリート造[1]
延床面積2.5万 m² [1]
階数地上2階、地下1階
着工2019年3月28日[2]
竣工2023年3月31日[3]
開館開所2024年4月1日
所在地980-0845
宮城県仙台市青葉区荒巻字青葉
東北大学青葉山新キャンパス内)
座標北緯38度15分3.7秒 東経140度49分54.1秒 / 北緯38.251028度 東経140.831694度 / 38.251028; 140.831694 (ナノテラス(NanoTerasu))座標: 北緯38度15分3.7秒 東経140度49分54.1秒 / 北緯38.251028度 東経140.831694度 / 38.251028; 140.831694 (ナノテラス(NanoTerasu))
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概要

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周長349 m、エミッタンス1.14 nmrad(ナノメートルラジアン)、加速エネルギー3 GeVの施設[8]

1ミリの1000分の1が1ミクロ、1ミクロの1000分の1が1ナノ[注 1]。施設には放射光という光を使って物質の中の「性質」や「どう変わるか」をナノという小さい世界で詳しく見る装置がある。

開所日現在、放射光施設は世界ではアメリカNSLS-Ⅱ英語版スペインALBA英語版スウェーデンMAX-Ⅳ英語版中国上海光源英語版など50か所あるといわれており、日本では10か所と言われている[9]

設備設置者は量子科学技術研究開発機構(QST)で、東北大学を始めとする東北7大学を中心にした組織である光科学イノベーションセンター(PhoSIC)との官民地域パートナーシップで整備され、高輝度光科学研究センターが共用法に云う登録施設利用促進機関[10]として運営に参画する。

ナノテラスに近接するエリアには、4万平方メートル規模の「サイエンスパーク」の整備が進められている[11]。サイエンスパーク内には、ナノテラスの利用を企業や大学に促進する「東北大学放射光イノベーション・スマート研究センター」[12]、ナノテラスの研究データを解析するための「東北大学未踏スケールデータアナリティクスセンター」[13]がある[14]。また、企業向けの貸研究室を備えた「青葉山ユニバース」なども新設される[14]

2019年3月28日に着工し[15]、2022年6月6日に愛称がナノテラス (NanoTerasu) に決定した。2023年3月には基本建屋が竣工し、4月には線形加速器が所期の性能を達成。5月共用法が改正され特定放射光施設に追加された。12月7日ファーストビーム達成[16]

ビームライン

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設置可能なビームライン(BL)の最大本数は28本で、運用初期にはBL検討委員会で選定された10本(PhoSIC7本、QST3本)が設置される。[17]

BL番号名称利用エネルギー域(偏光)所属備考
BL-IX線オペランド分光2 - 20 keV(水平直線)パートナー
BL-IIX線構造・電子状態トータル解析2 - 20 keV(水平直線)パートナー
BL-IIIX線階層的構造解析4.4 - 30 keV(水平直線)パートナー
BL-IVX線コヒーレントイメージング3.1 - 20 keV(左右円)
2 - 20 keV(水平直線)
3.1 - 20 keV(垂直直線)
パートナー
BL-V軟X線磁気イメージング0.18 - 1.2 keV(左右円)
0.13 - 2 keV(水平直線)
0.23 - 2 keV(垂直直線)
パートナー
BL-VI軟X線電子状態解析0.05 - 1.0 keV(水平直線)
0.05 - 1.0 keV(垂直直線)
パートナー
BL-VII軟X線オペランド分光0.13 - 2 keV(水平直線)
0.23 - 2 keV(垂直直線)
パートナー
BL-VIII軟X線ナノ光電子分光0.05 - 1.0 keV(左右円)
0.05 - 1.0 keV(水平直線)
0.05 - 1.0 keV(垂直直線)
共用
BL-IX軟X線ナノ吸収分光0.18 - 2 keV(左右円)
0.13 - 2 keV(水平直線)
0.18 - 2 keV(垂直直線)
共用偏光高速切替
BL-X軟X線超高分解能共鳴非弾性散乱0.25 - 1.0 keV(左右円)
0.25 - 1.0 keV(水平直線)
0.25 - 1.0 keV(垂直直線)
共用

コアリション

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中小企業でも本施設を使いやすい仕組みとして設けられた制度。製品開発をしたい「企業」と、実験や解析をしたい「研究者」をマッチング。企業は研究者のサポートを受けながら実験を重ねる事が可能であり、研究者も企業が持つ沢山の疑問が研究材料となる。

脚注

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注釈

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  1. ^ 1ナノは1ミリの100万分の1

出典

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  1. ^ a b c 東北電など 次世代放射光施設、建屋工事は鹿島”. 電力時事通信社. 2023年7月4日閲覧。
  2. ^ 安全祈願祭・鍬入れの儀”. 量子科学技術研究開発機構 (2020年8月20日). 2023年7月4日閲覧。
  3. ^ 基本建屋の整備状況”. 量子科学技術研究開発機構 (2023年4月18日). 2023年7月4日閲覧。
  4. ^ NanoTerasu”. 2023年7月4日閲覧。
  5. ^ 3GeV高輝度放射光施設ナノテラスが稼働―日本の競争力の強化に大きく貢献− 量子科学技術研究開発機構
  6. ^ 次世代放射光施設に関するこれまでの経緯及びビームライン検討について (PDF)
  7. ^ 愛称は「ナノテラス」 仙台の次世代型放射光施設”. 河北新報. 2023年6月2日閲覧。
  8. ^ 加速器のデザインレポートを掲載しました(和文版 英文版) - 量子科学技術研究開発機構”. www.qst.go.jp. 2023年12月13日閲覧。
  9. ^ 東北ココから 「ナノの世界が未来をテラス!?」(2024.5.17放送)
  10. ^ 特定先端大型研究施設の共用の促進に関する法律第28条第2項に基づく公示について 文部科学省
  11. ^ サイエンスパークとナノテラス”. 東北大学産学連携機構. 2023年7月4日閲覧。
  12. ^ SRIS 国際放射光イノベーション・スマート研究センター”. 2023年7月4日閲覧。
  13. ^ “[東北大学未踏スケールデータアナリティクスセンター”. 2023年7月4日閲覧。
  14. ^ a b 「ナノを照らす」巨大顕微鏡仙台に 24年度稼働、研究開発拠点を集積へ”. Yahoo!ニュース. ovo (2022年9月20日). 2023年7月4日閲覧。
  15. ^ 次世代放射光施設の敷地造成に着手-QST
  16. ^ [1]
  17. ^ 次世代放射光施設 ビームライン検討委員会報告書 別添資料10 初期整備ビームラインリスト

関連項目

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外部リンク

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