ファイバーチャネル

ファイバチャネルから転送)

ファイバーチャネル: Fibre Channel[1]、略称:FC)はギガビット級ネットワーク技術の一種であり、主にストレージエリアネットワーク (SAN) の構成要素としてデータセンターで使用されている。情報技術規格国際委員会(INCITS, 米国国家規格協会:ANSIが信任した委員会)のT11技術委員会が標準化した[2]。接続には主に光ファイバーを使用し、長区間(最大100 km)かつ高速(最大128Gb/s)な伝送を実現する。種々の上位プロトコルがサポートされているが、主にSCSIコマンドがネットワーク上でやり取りされる。メインフレームではFICONが利用される場合もある。

ファイバーチャネルスイッチの一例。水色のケーブルは光ファイバー

歴史

編集

ファイバーチャネルはIPI (Intelligent Peripheral Interface)プロトコルの拡張プロジェクトの一部として検討が始まり、1988年にANSI X3T9によりプロジェクトとして承認、1994年には規格が承認された[3]。スループットは下記の通り1 Gb/s (1GFC)から始まり世代毎に2倍になってきた[4]

ロードマップ - FC (英語版より、本表のみ反映)
名称Line Rate

(GBaud)

Line

Coding

公称スループット

(MByte/sec)

発売日
133 Mbit/s0.13281258b10b12.51993
266 Mbit/s0.265625251994
533 Mbit/s0.5312550?
1GFC1.06251001997
2GFC2.1252002001
4GFC4.254002004
8GFC8.58002005
10GFC10.5187564b66b1,2002008
16GFC14.0251,6002011
32GFC "Gen 6"28.05256b257b3,2002016
64GFC "Gen 7"28.9256b257b

(FC-FS-5)

6,4002019
128GFC "Gen 6"28.05 ×4256b257b12,8002016
256GFC "Gen 7"28.9 ×425,6002019
128GFC "Gen 8"57.812,800planned 2022
ロードマップ - スイッチ間接続
名称Line Rate

(GBaud)

スループット

(MByte/sec)

発売日
10GFC10.522,4002009
20GFC21.044,8002008
128GFCp28.05 x425,6002016
256GFCp56.10 x451,2002019 (予定)

接続形態

編集
ファイバーチャネルの接続形態

3つの主要なトポロジー(接続形態)がある[5]

ポイント・ツー・ポイント (FC-P2P)
ふたつの機器が相互に接続される。最も単純なトポロジー。
調停ループ (FC-AL)
全ての機器がループ状に接続される。高価なスイッチなしで複数の機器を接続できるが、帯域を共有するためパフォーマンス(バンド幅)に制限がある。またループから機器を取り外したり接続する場合、ループ全体が使えなくなる。機器のひとつが故障するとループ全体の通信ができなくなる。
ファブリック (FC-SW)
全ての機器をファイバーチャネル・スイッチに接続する。拡張性やパフォーマンスに優れる。
接続形態の比較[6]
項目P2P調停ループファブリック
最大ポート数2127~16777216 (2^24)
最大バンド幅2×リンクレート2×リンクレート(ポート数)×リンクレート
ポート障害の影響リンク障害ループ障害スイッチおよびポートリンク障害
メンテナンスの影響リンクダウンループ全体ダウンの可能性ありスイッチおよびポートリンクダウン
可能なリンクレート全て全て(ただし全体が同じレート)全て(レートの混在可)

プロトコル

編集
ファイバーチャネルのプロトコル階層

ファイバーチャネルは階層化されたプロトコルを持つ。以下の5層から構成される[7][8]

FC0
物理層。ケーブル、光ファイバー、コネクタやスループットなどを規定。
FC1
データ符号化・復号の方法を規定。8b/10b及び64b/66b符号化方式を採用[9]
FC2
データの最小単位であるフレームの組み立て方やデータ転送の制御方法を規定。
FC3
共通サービス層。暗号化やRAIDなどの拡張機能を規定。
FC4
プロトコル変換層。FC0-FC3を下記のような上位プロトコルにマッピングするルールを規定[10]。特にSCSIに変換されたものをファイバー・チャネル・プロトコル英語版と呼ぶ[11]
・Small Computer System Interface (SCSI)
・Intelligent Peripheral Interface (IPI)
・High Performance Parallel Interface (HIPPI) Framing Protocol
・Internet Protocol (IP)
・ATM Adaptation Layer for computer data (AAL5)
・Link Encapsulation (FC-LE)
・Single Byte Command Code Set Mapping (SBCCS)
・IEEE 802.2
FICON - メインフレーム向け

FC0、FC1、FC2は総称してFC-PH(ファイバーチャネル物理層)とも呼ばれる。

光伝送媒体

編集
SFPとLCコネクター。128GFCではQSFP28モジュールとMPOコネクターも利用される

ポートのフォームファクターSFP (Small Form-factor Pluggable transceiver)及びそれを拡張したSFP+が主流である[12]。128GFCではQSFP (Quad Small Form-factor Pluggable)が用いられる事もある(右図)。SFPモジュールはレシーバー・ポート(RX)とトランスミッター・ポート(TX)があり、これらで一つの光インターフェースを構成している。SFP/SFP+にはShort Wavelength Laser(SWL)、Long Wavelength Laser (LWL)及びExtended distanceがあり、最大の伝送距離はそれぞれ550 m、10 km、70-100 kmまでとなっているが[13]、下記の通りケーブルのカテゴリとスループットの組み合わせにもよって異なるので注意する。

ファイバーケーブルの比較[14]
カテゴリモードコア直径 (um)波長 (nm)バンド幅 (MHz)
OM1マルチモード62.5850/1300200オレンジ
OM250500
OM32000水色
OM44700
OM5ワイドバンド・マルチモード850 - 9534700 -2470黄緑
OS1シングルモード91310/1550NA黄色


最大伝送距離 (m)
OM1OM2OM3OM4
1 GFC300500860NA
2 GFC150300500
4 GFC70150380400
8 GFC2150150190
10 GFC3382Up to 300Up to 400
16 GFC1535100125
25 GFCNA2070100
32 GFC

スイッチ

編集

ファイバーチャネルスイッチは2つに分類される。この分類は標準ではなくメーカーに依るものである。ブロケード(含むMcDATA、CNT)、シスコシステムズは両方を販売している。QLogicはファブリックスイッチを販売している。

ダイレクタースイッチ
一般にポート数が多く、コントローラーが二重化されていたり一箇所が故障しても動作し続ける (no single-point-of-failure) 高可用性が特徴。
ファブリックスイッチ
一般にシンプルで冗長でないスイッチ

ホストバスアダプタ

編集
ファイバーチャネルアダプタ (デュアルポート)

ホストバスアダプタ(HBA = コンピュータ用コントローラカード)は様々なシステム、バスに用意されている。PCI Expressが主要なバスであり、ホストやコンピューターのPCI Expressに当該ボードを刺すことでファイバーネットワークへの参加が可能となる[15]

  • RFC 4369 - Internet Fibre Channel Protocol (iFCP) のための管理オブジェクト定義
  • RFC 4044 - ファイバーチャネル管理MIB
  • RFC 3723 - Securing Block Storage Protocols over IP
  • RFC 2837 - ファイバーチャネル標準におけるファブリック要素のための管理オブジェクト定義
  • RFC 4338 - ファイバーチャネル上のIPv4、IPv6およびARP
  • RFC 4625 ファイバーチャネル・ルーティング情報MIB
  • RFC 4626 ファイバーチャネルのFSPF (Fabric Shortest Path First) ルーティングプロトコルのためのMIB

関連項目

編集

脚注

編集
  1. ^ ファイバーはアメリカ英語で「Fiber」とつづることが多いが、ファイバーチャネルではイギリス英語の「Fibre」とつづる。詳細:ファイバチャネルFAQ
  2. ^ T11 - Fibre Channel Interfaces、2017年12月16日閲覧。
  3. ^ An Introduction to Fibre Channel、2017年12月16日閲覧。
  4. ^ ロードマップ、2017年12月16日閲覧。
  5. ^ 接続形態、2017年12月16日閲覧。
  6. ^ トポロジーの比較
  7. ^ プロトコル階層“特集:IP技術者のためのSAN入門”. atmarkIT. (2002年8月22日). https://atmarkit.itmedia.co.jp/ait/articles/0208/22/news001_3.html 
  8. ^ Fibre Channel Overview” (英語). 2017年12月16日閲覧。
  9. ^ Fibre Channel 基礎講座”. 2017年12月16日閲覧。
  10. ^ プロトコルのマッピング“ストレージ・ネットワークの技術”. ITmedia エンタープライズ. (2006年6月24日). https://www.itmedia.co.jp/im/articles/0606/24/news009_3.html 
  11. ^ Storage Networking 101: Understanding the Fibre Channel Protocol” (英語). 2017年12月16日閲覧。
  12. ^ ポート・コネクタ
  13. ^ SFPモジュール
  14. ^ ファイバーケーブルの比較
  15. ^ ファイバーチャネルアダプター QLogic

外部リンク

編集