命数法

数を表現するための表記体系
上数から転送)

命数法(めいすうほう、英語: Numeral system, または system of numeration)とは、を名付ける法、即ち与えられた数を表わすための、一連の方式・規則・対応である。

概要

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命数法とは、数値を表すときの数詞体系[1]であり、言語により異なる。例えば、1桁の数値では「の次」を表す数詞(5)を、日本語では「」、英語では"five"(ファイブ)、ドイツ語では"fünf"、ラテン語では"quinque"という。同じく、十進数における「十の四」を表す数(10,000)を、日本語では「一」、英語では"ten thousand"(テン・サウザンド、十千)と呼ぶ。これらの組み合わせにより任意の数値を表すことができる。言語により同じ数値命数法のうち、数字を用いて数を表す方法を記数法という。

命数には、一般に「一」や「三」など自然数を表す数詞、「」などを表す数詞、「百」や「千」など何かの冪乗を表す数詞とがある。

位取りは十進法が圧倒的に多いが、十進法に囚われる必要は無く、十二進法二十進法も散見される。十を超える数で、十進法から独立している数詞として、十二を意味する"dozen"(日本語ではダース)や"打"(→zh:打)、百四十四を意味する"gross"(グロス)、千七百二十八を意味する"great gross"、二十を意味する"score"(スコア)や"vingt"(フランス語)や"廿"や"kal"(マヤ数詞、以下同じ)、四百を意味する"bak"、八千を意味する"pic"などがある。


以下の記述においては、まず大数の命数法と小数の命数法に大別して解説する。

大数の命数法

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万進法系の命数法

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中国に由来する漢数字では、以下の数詞で大数を示す。

、…

中国の算術書である後漢の徐岳『数術記遺中国語版』や北周の甄鸞『五経算術中国語版』に、大数の単位が記されているが、当時は載までであり、また𥝱は本来は秭であり、それが日本の『塵劫記』で字形が変化したものである。これらの文献によると、万より大きい数詞の示す値には3種類あり、統一されていなかった。下数、中数、上数である[2]

当初は万(104)を区切りとして十万(105)、百万(106)、千万(107)まで表していた。これとは別に、万から1桁ごとに億(105)、兆(106)、と名付けていた。これを下数(かすう)と呼ぶ。

代あたりから、上数(じょうすう)が文献に記載され始めた。数詞が表す位の2乗が次の数詞となる。万万が億(108)であるのは今日と同じであるが、次は億億が兆(1016)、兆兆が京(1032)となる。実際に使われたことはないようであり、数学書では用いられていない。

その後、千万の次を億とし、十億(109)、百億(1010)と続けていく方法が考案された。これを中数(ちゅうすう)という。ただし、初期の数学書に示されている中数は万万(108)倍ごとに新たな名称をつける方式であった。すなわち、千億(1011)、万億(1012)、十万億(1013)と続き、億の万万倍を兆(1016)、兆の万万倍を京(1024)とする。これを万万進という。後に、万倍ごと、すなわち万万を億、万億を兆(1012)とする万進(まんしん、万進法(まんしんほう))に移行した。

元の朱世傑による算学啓蒙で初めて、極以上の単位(そのうち恒河沙以上は仏教に由来する名称)が加わったが、当時不可思議の上は無量大数ではなく無量数であり、明の程大位による算法統宗でも同様であった。極以上の単位は基本的に中数(万進・万万進)のみで使われ、下数や上数で使われることはなかったが、ただ日本の『塵劫記』初版で極以下を下数としており、それによれば極は1015ということになる。

日本では、1627年寛永4年)の『塵劫記』の初版において初めて大きな数が登場するが[3]、極以下が下数、恒河沙以上を万万進の中数(恒河沙=1023、阿僧祇=1031、那由他=1039、不可思議=1047)としていた。1631年(寛永8年)の版では極以下が万進(恒河沙以上は万万進のまま)に改められ、それとともに算学啓蒙・算法統宗にあった不可思議の上の無量数も無量大数という名称として組み込まれた。そして1634年(寛永11年)の版ではすべて万進に統一された。今日でも万進だけが使用されている。

読み方の例を以下に示す。

  • 1 0000 : 一万 (いちまん)
  • 983 6703 : 九百八十三万 六千七百三 (きゅうひゃくはちじゅうさんまん ろくせんななひゃくさん)
  • 20 3652 1801 : 二十億 三千六百五十二万 千八百一 (にじゅうおく さんぜんろっぴゃくごじゅうにまん せんはっぴゃくいち)

アラビア数字が使われる場合は、英語のように3桁ごとにコンマが入れられる。アラビア数字と漢数字が同時に使われる場合は、1万以下の数字についてアラビア数字の書き方が使われる場合がある(例: 25,000,000を2,500万と表記する場合)。

大きな数字が漢字で表されるときは、ほとんどの場合でゼロが省かれる。例えば、4002はゼロを表す中国語での「四千零二」ではなく、四千二と表されることが多い。ただし、決算書を読み上げる場合、読まない桁は、「飛び」または「飛んで」で示される場合がある。例えば、通常の「よんせんに」の代わりに、「よんせんとびに」または「よんせんとんでに」のようにもなる。

中国では、近代まで万万進と万進が混用されたままであった。それに加えて、メートル法接頭語メガ(106)に「兆」(下数における 106)の字をあてたため、さらに混乱が生じた。今日では、「億」は中数の 108、「兆」は下数の 106 の意味となっており、兆より億の方が大きくなっている。日本でいう兆(1012)は「万億」といい、京以上については、例えば 1016 は「万万億」または「億億」のように呼んでいる。台湾と朝鮮半島では植民地時代に、日本の命数法(万進)が導入されていたので、兆は 1012 であるが、京以上の命数はほとんど用いられていない。

ベトナムでは西洋式に3桁ずつ新しい名称が使われるが、106を「triệu」(兆)、109を「tỷ」(秭)と呼ぶ。これは下数にあたる。

『塵劫記』での命数は以下のようになっている[4]

位の大きなものの名称については版によって相違がある。併記した記数は万進による。

塵劫記(寛永11年版)での命数(日本の現行方式)
数詞読み10000m一(いち)十(じゅう)百(ひゃく)千(せん)補足

100

101

102

103
まん104100001一万
104
十万
105
百万
106
千万
107
おく108100002一億
108
十億
109
百億
1010
千億
1011
ちょう1012100003一兆
1012
十兆
1013
百兆
1014
千兆
1015
けい1016100004一京
1016
十京
1017
百京
1018
千京
1019
(きょう)
がい1020100005一垓
1020
十垓
1021
百垓
1022
千垓
1023
𥝱じょ1024100006一𥝱
1024
十𥝱
1025
百𥝱
1026
千𥝱
1027
(し)
じょう1028100007一穣
1028
十穣
1029
百穣
1030
千穣
1031
こう1032100008一溝
1032
十溝
1033
百溝
1034
千溝
1035
かん1036100009一澗
1036
十澗
1037
百澗
1038
千澗
1039
せい10401000010一正
1040
十正
1041
百正
1042
千正
1043
さい10441000011一載
1044
十載
1045
百載
1046
千載
1047
ごく10481000012一極
1048
十極
1049
百極
1050
千極
1051
恒河沙ごうがしゃ10521000013一恒河沙
1052
十恒河沙
1053
百恒河沙
1054
千恒河沙
1055
阿僧祇あそうぎ10561000014一阿僧祇
1056
十阿僧祇
1057
百阿僧祇
1058
千阿僧祇
1059
那由他なゆた10601000015一那由他
1060
十那由他
1061
百那由他
1062
千那由他
1063
不可思議ふかしぎ10641000016一不可思議
1064
十不可思議
1065
百不可思議
1066
千不可思議
1067
無量大数むりょうたいすう10681000017一無量大数
1068
十無量大数
1069
百無量大数
1070
千無量大数
1071

以下の表に各方式での大数の命数法を示す。

各方式での大数の命数法
名称下数中数(万進・日本の現行方式)塵劫記寛永8年版中数(万万進)上数
101101101101101
102102102102102
103103103103103
104104104104104
105108108108108
1061012101210161016
1071016101610241032
1081020102010321064
秭(𥝱)10910241024104010128
101010281028104810256
101110321032105610512
1012103610361064101024
1013104010401072102048
1014104410441080104096
1015(塵劫記初版)104810481088-
恒河沙-105210561096-
阿僧祇-1056106410104-
那由他-1060107210112-
不可思議-1064108010120-
無量数(無量大数)-1068108810128-

なお、無量大数を「無量」と「大数」に分けて説明しているものもあるが、これは『塵劫記』で無量と大数の間に傷ができて間隔があき、別の数のように見える版があったためである。無量大数で一つの数とするのが普通である。

3文字以上の単位は、インドから由来したものが多い。恒河沙はもともと仏教の聖典で無限に大きな数を表すのに使われていた位で、गङ्गा(ガンジス川)から由来している。阿僧祇はअसंख्येय(不可算)から、那由他はनयुत/नयुतःから由来している。それより大きな数の単位は、仏教の単語が中国語に翻訳され、後に単位を与えられたものである。

千進法系の命数法

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西洋の諸言語命数法には、long scale(ロングスケール)とshort scale(ショートスケール)と呼ばれる2種類がある。これは漢字文化圏でいう万万進万進の関係に似たものである。万万進と万進の関係と同様に、一部の数詞においては、双方の命数法でそれぞれ異なる数が割り当てられている (「billion」「trillion」など)。long scaleやshort scaleは標準的な用語ではないが、意味するところが明確なので、百科事典や科学的な文章でしばしば使われる。

19世紀から20世紀の大部分では、イギリスでは前者のみ、アメリカでは後者のみが使われていた。それ故、それぞれ「イギリス式」、「アメリカ式」とも呼ばれるが、今日ではイギリスでも後者が使われるため、「イギリス式」という表現は正確ではない。

歴史上フランスでは双方共に用いられており、19世紀はじめには広範囲でshort scaleに移行した。アメリカはこれに従ったもので、long scaleを使用していた20世紀初頭のイギリスにおいてアメリカでは方式が違うことに注意を呼びかけている[5]。しかし、現在ではフランスも他の英語圏を除くヨーロッパ諸国に合わせてlong scaleに落ちつき、それとは逆にイギリスではshort scaleに移行するという複雑な経緯を辿っている。

1948年国際度量衡総会はlong scaleの普遍的な使用を提案し、short scaleを使っている国々にlong scaleに戻すよう呼びかけた。しかし、英語圏においては上述の通りアメリカを筆頭にイギリスが移行したこともあり、現在では一般的にshort scaleが使用されている(歴史も参照)。

long scaleとshort scaleの比較

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英語の場合は、以下のようになる。千進(せんしん、千進法(せんしんほう))が使われる。

short scalelong scaleSI接頭語
呼び方カタカナ表記理由呼び方カタカナ表記理由
100oneワン1oneワン1なし
103thousandサウザンド(103)1thousandサウザンド(106)0.5k(キロ
106(百millionミリオン(103)1+1millionミリオン(106)1M(メガ
109(十billionビリオン(103)1+2thousand million
(milliard)
サウザンド ミリオン
(ミリアード)
(106)1.5G(ギガ
1012(一trillionトリリオン(103)1+3billionビリオン(106)2T(テラ
1015(千兆)quadrillionクアドリリオン(103)1+4thousand billion
(billiard)
サウザンド ビリオン
(ビリアード)
(106)2.5P(ペタ
1018(百quintillionクインティリオン(103)1+5trillionトリリオン(106)3E(エクサ
  • millionは、イタリア語で千を意味する “mille” に、拡大接尾辞(他の語の後ろについて意味を誇張する)“-one” がついた “millione” (現代の正書法では milione)が語源である。
  • bi-(バイ)は2を、tri-(トライ)は3を、quadr-(クアドラ)は4を、quint-(クイント)は5を表すラテン語に由来する倍数接頭辞
    • short scaleでは、1,000倍するごとに新しい名前がつく (千進(せんしん)、千進法(せんしんほう)、thousand millions = billion, thousand billions = trillion, ...)。
    • long scaleでは、1,000,000倍するごとに新しい名前がつく (百万進(ひゃくまんしん)、百万進法(ひゃくまんしんほう)、million millions = billion, million billions = trillion, ...)。
  • 古語に十億を表すmilliardがあるが、英語では使われることはない(言語によっては使われる)。だが金融市場においては、誤解を避けるために十億を "yard"(milliardに由来)と言うことがある。
  • より大きな数の表し方についてはNames of large numbers数の比較を参照。

歴史

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年代出来事
1475年ジャン・アダムが1012(一兆)、1018(百京)を表す言葉としてbymillion, trimillionを用いた。
1484年フランス数学者ニコラ・シュケー英語版が著書『Triparty en la science des nombres』の中で、1012(一兆)、1018(百京)、1024(一)、1030(百)、1036(一)、1042(百)、1048(一)、1054(百恒河沙:万進法による)をそれぞれbyllion tryllion, quadrillion, quyllion, sixlion, septyllion, ottyllion, nonyllionと表した。この本は1870年代に初めて発行されたものであったが、この大部分はエスティエンヌ・ド・ラ・ロッシュ英語版の著書『L'arismetique』(1520年)からとったものであった。
1549年ジャック・ペルチエがmilliard (milliart) を "Million de Millions"(millionのmillion)すなわち1012(一兆)として用いた。彼はこの用法をフランス人の学者ギヨーム・ビュデ(1467-1540年)によるものだとした。
17世紀6桁(百万)ごとに名前の変わる伝統的な方式(後のlong scale)から、3桁(千)ごとに名前の変わる新しい方式(後のshort scale)が分かれ、フランスやイタリアでbillionを109(十億)の意味で使う科学者が現れた。それでもthousand millionやmilliard(ペルチエの用語)を用いる方が多数派であった。こちらの用法がイギリスやドイツその他ヨーロッパ全域で採用され、Chuquetのlong scaleのbillion(一兆)が使われ続けることとなった。
18世紀
半ば
short scaleの意味でのbillionがアメリカのイギリス植民地にもたらされる。
19世紀
はじめ
フランスが広くshort scaleに移行し、アメリカ合衆国がそれに続き、学校でも教えられるようになった。19世紀のフランスの百科事典の多くではlong scaleは省かれたり、「今やもう古い方式である」と書かれたりしていた。
1926年H. W. Fowlerの『Modern English Usage』に、「アメリカ(フランスに従った)では "billion" はイギリスと同じ意味ではないことを覚えておくべきだ。billionは我々(イギリス人)にとってはmillionの2乗すなわちmillion millions(一兆)を意味するものだが、アメリカ人にとってはthousandの3乗すなわちthousand millions(十億)を表す。これは我々がmilliardと呼んでいるものである。我々の意味におけるbillionが天文学者以外には使い勝手が悪いからといって従わないのは残念なことである」と記された。
1948年国際度量衡総会はlong scaleの普遍的な使用を提案し、short scaleを使っている国々にlong scaleに戻すよう呼びかけた。
1961年Journal Officiel(フランスの官報)は、フランスで公式にlong scaleが用いられていることを確認した[6]
1974年イギリス首相ハロルド・ウィルソンは、これからは政府の統計でshort scaleを用いると述べた[7]20世紀の最後の四半期には、他の多くの英語圏の国々もこれに続いてshort scaleに切り替えた。しかしながら、これらの全ての国において、わずかながらlong scaleの使用は続いており、また公式にshort scaleが使われていることも明確ではない。
1994年イタリア政府は公式にlong scaleが用いられていることを確認した[8]

現在の使用状況

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各国の命数法
千進法 long scale 千進法 short scale 千進法両方 その他
short scaleを用いる国
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英語圏
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現在英語圏の多くの国でshort scaleが用いられている。以下はその一部である。

英語圏以外
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109 = milliard、1012 = trillion

109 = billion、1012 = trillion

独自の名称

  • ギリシャ - 109をdisekatommyrio(「二-百-万」の意)、1012をtrisekatommyrio(「三-百-万」の意)という。
  • キプロス
long scaleを用いる国
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英語圏と東欧を除く多くの大陸ヨーロッパの国々ではlong scaleを使う。

  • Milliard
フランス語デンマーク語ノルウェー語: milliard、ドイツ語: Milliardeオランダ語: miljardハンガリー語: milliárdスペイン語: millardomil millonesの方が頻繁に用いられる)、イタリア語: miliardoポーランド語: miliardスウェーデン語: miljardmilliardということもある)、フィンランド語: miljardiチェコ語: miliardaスロベニア語クロアチア語セルビア語: milijarda、アイスランド語: milljarður - 皆109を表す。
  • Billion
フランス語・デンマーク語・ノルウェー語: billion、ドイツ語: Billionオランダ語: biljoenハンガリー語: billióスペイン語: billón、ポーランド語・セルビア語: bilion、スウェーデン語: biljonbillionということもある)、フィンランド語: biljoonaクロアチア語: bilijunポルトガル語(ポルトガル): biliãoスロベニア語: bilijonアイスランド語: billjón - 皆1012を表す。

用法

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"thousand milliard" の使用
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Milliardを用いるこれらの国々において "thousand milliard" という用語が時折使われるが、これは予算についての文脈でのみである。「ドイツ国債2004年末の時点で約1418 milliardユーロ(1兆4180億ユーロ)であった」というように、milliardは予算の単位としては主要なものとなっている。予算以外については、1012はthousand milliardではなくbillionという。

イタリアでの用法
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19世紀にはshort scaleを用いていたが20世紀になってlong scaleに戻したヨーロッパの国は2つあるが、イタリアはその1つである(もう1つはフランス)。

イタリア語では、bilioneという単語は公式には1012を意味するが、口語では109と1012のいずれをも意味し得る。またtrilioneも、1012と(まれに)1018のいずれをも意味する。そのため、曖昧さを避けるために、こうした単語を使う人はほとんどいない。一般には1012はmille miliardi (a thousand milliards)、1015はun milione di miliardi、1018はun miliardo di miliardi、1021はmille miliardi di miliardiという方が多い。

英語圏での用法
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アメリカでの用法
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アメリカ合衆国では、19世紀初頭から学校でshort scaleが教えられてきた。そのため、専らshort scaleのみが用いられている。

他の国々
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アメリカ以外の国では何世紀にもわたってlong scaleが用いられてきた。従って、long scaleの使用もいまだ続いており、そのためshort scaleの公式の立場がはっきりしていない。

イギリスでの用法
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イギリス英語においてmilliardという用語は今や時代遅れであり(派生語のyardは使われる。#long scaleとshort scaleの比較を参照)、現在では刊行物でも筆記物でもbillionが109以外を意味することはない。イギリス政府もBBCも専らshort scaleを用いている。イギリス英語で1012の意味でbillionを用いた場合、誤解される可能性が高い。

オーストラリアでの用法
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オーストラリアでは、2つの物を同じmillionの単位で比較するときなど、109をthousand millionと表すこともある。1999年現在、オーストラリア政府の財務省はshort scaleが標準であるとは見なしていないが、時折short scaleを使っている[9]。Australian Department of Finance and Administration(AusInfoとして知られる)は現在、short scaleを推奨しており、法的定義もshort scaleである。教育、放送局、文学においても、他の英語圏と同様にshort scaleを用いている。

インドでの用法
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他の英語圏の国と同様、現在、インドもアメリカのshort scaleの影響を強く受けている。しかし経済関連のメディア以外ではまちまちであり、話者の教育環境や学歴によるため、イギリスの影響下であったこともあり、多くが伝統的なlong scaleを使い続けると思われる。また、日常生活では、現在でもインド独自の命数法を用いている。(short scaleもlong scaleも用いない国参照)

エスペラントでの用法
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エスペラントの公式の単語であるbilionoやtriliono等の意味するところは曖昧であり、long scaleとshort scaleのどちらを支持するかを国家が推定するのを妨げることによって、国際的なエスペラントのコミュニケーションの本質は問題を複雑化させていた。

ただ、現在では非公式だが一般に用いられている -ilion- という接尾辞 (106×n) を用いることで曖昧を避けようとする方向に向かっている。これは106べき乗を表すために追加されたもので、例えばduiliono(duはエスペラントで「二」)は 106×2 = 1012、triiliono(triはエスペラントで「三」)は 106×3 = 1018 を表す。

miliardoは明確に109を表す単語であるが、最近ではこれを基にした-iliard-を非公式な接尾辞 (106×n+3) と見立ててduiliardo = 106×2+3 = 1015、triliono = 106×3+3 = 1021のように表すことが多い。つまり-ilion-の1000倍の数を表すのである。

これによって、mililiono = 106×1000 = 106000やmililiardo = 106×1000+3 = 106003等の大きな数も簡単に作れるようになった (mil = 1000)。

混乱回避措置

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long scaleとshort scaleを使用している国では百万より大きい単位では同じ単語が異なる桁を示すなど表記の仕方が異なる。混乱を回避するために以下のような表示がされる[10]。なお命数法の違いに加え、小数点や3桁を区切る記号をコンマかピリオド(終止符)かという小数点の問題がある。

もっとも簡単な方法が全数を記述することである。
例)1,000,000,000,000 これはshort scaleでは1 trillionであるがlong scaleでは1 billionである。
ミリオン(百万)までは共通であるので百万以上の桁を数字で表示する[11]
例)12,345 million(ミリオン)
指数表記で桁を表す。
1×109、1×1010、1×1011、1×1012などで広く使われている。または一般的ではないがコンピューターで1e9、1e10、1e11、1e12と表記される。
SI接頭語で表す。
SI接頭語は基本単位に非依存の数値の桁のみを表すものでキロ(k, 103 = 千)、メガ(M, 106 = 百万)、ギガ(G, 109 = 十億)、テラ(T, 1012 = 兆)などである。これらは科学者・技術者の間で広く使われている。例)キログラムメガワットギガヘルツテラバイト。これらはコンピュータの普及により一般にも知られているが、1ギガドルといった表現は一般的ではない。なお日本では電力表示に億kW(キロワット)といった使われ方をする。1億kWは100ギガワット (GW)である。

インド

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インドの命数法は、古代インドから現代でもインド、パキスタンバングラデシュネパールミャンマーなどで使用されている。基本的には、西洋で一般的な3桁ごとの位取りや、日本中国などで一般的な4桁ごとの位取りではなく、インドにおいては2桁ごとの位取りに基づく。

この命数法による表記では、基本的に2桁ごと(下3桁のみ例外)の位取りに基づいて点を置く。例えば3カロール(3千万)ルピーと記する場合はRs. 30,000,000ではなく、Rs. 3,00,00,000とすることが多い。ハザール/サハストル(千)、ラーク(十万)、カロール(千万)で区切っている。

ラーク (lakh)、カロール (crore) という単語は後述の仏典の華厳経(八十華厳及び四十華厳)における洛叉倶胝に当たる。またインド英語では今日でも頻繁に使われており、インドでの英字新聞等でも普通に使用される。なお、英語の綴りと実際の発音とは大きくかけ離れている場合が多い。

呼び方数字桁数西洋の記数法と日本語での命数法による呼び方
एक (ek) エーク11001(
दस (das) ダス1010110(
सौ (sau) ソウ100102100(
सहस्त्र (sahastr) サハストル / हज़ार (hazaar) ハザール1,0001031,000(
लाख (lakh) ラーク1,00,000105100,000(十
करोड़ (crore) カロール1,00,00,00010710,000,000(千万)
अरब (arawb) アラブ1,00,00,00,0001091,000,000,000(十
खरब (kharawb) カラブ1,00,00,00,00,0001011100,000,000,000(千億)
नील (neel) ニール1,00,00,00,00,00,000101310,000,000,000,000(十
पद्म (padma) パドマ1,00,00,00,00,00,00,00010151,000,000,000,000,000(千兆)
शंख (shankh) シャンク1,00,00,00,00,00,00,00,0001017100,000,000,000,000,000(十
महाशंख (mahashankh) マハーシャンク1,00,00,00,00,00,00,00,00,000101910,000,000,000,000,000,000(千京)

ヒンディー語において、新聞などでパドマ、カラブの単位までは時折使用されるが、それ以上の単位が登場する事はない。またインド英語においては、アラブ以上の単位は通常用いられない。しかしながら、インド数学の古い文書ではニール、パドマ、シャンクが用いられる事も多い。

高桁数の表記の場合は、ラークとカロールを組み合わせて、1ラーク・カロール(一兆、1012)等ということが多い。

ムンバイのギャングなどが話すスラングでは、カロールのことを「コーカー」(khokha)、ラークのことを「ペーティー」(peti) ということがある。

イランでは、50万を表す単語として「コルール」(ペルシア語: کرور‎ Korūr)を最近まで使用していた。

シンハラ語では、カロールを「コーティヤ」(kōţiya)、ラークを「ラクシャヤ」(lakshaya) と呼んでいる。また、カンナダ語のような他の南インド言語では、カロールは「コティ」(koti)、ラークは「ラクシャ」(laksha) と呼ばれている。

ベンガル語にもシャンクと同源の শঙ্খ/ʃɔŋkʰɔ/ ションコ)という語が見られるが表す数は1012、つまり一兆であり、またパドマと同源の পদ্ম(綴り通りにラテン文字転写すれば padma となるが実際の発音は /pɔdːɔ̃/ ポッド)という語も存在するが指す数は1013、つまり十兆である[12]

ラークは最近「ラキ」(laki) としてスワヒリ語にも取り入れられている。

仏典の数詞

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八十華厳における命数
名称読みn
倶胝くてい0107
阿庾多あゆた11014
那由他なゆた21028
頻波羅ひんばら31056
矜羯羅こんがら410112
阿伽羅あから510224
最勝さいしょう610448
摩婆羅まばら710896
阿婆羅あばら8101792
多婆羅たばら9103584
界分かいぶん10107168
普摩ふま111014336
禰摩ねま121028672
阿婆鈐あばけん131057344
弥伽婆みかば1410114688
毘攞伽びらか1510229376
毘伽婆びかば1610458752
僧羯邏摩そうがらま1710917504
毘薩羅びさら18101835008
毘贍婆びせんば19103670016
毘盛伽びじょうが20107340032
毘素陀びすだ211014680064
毘婆訶びばか221029360128
毘薄底びばてい231058720256
毘佉擔びきゃたん2410117440512
称量しょうりょう2510234881024
一持いちじ2610469762048
異路いろ2710939524096
顛倒てんどう28101879048192
三末耶さんまや29103758096384
毘覩羅びとら30107516192768
奚婆羅けいばら311015032385536
伺察しさつ321030064771072
周広しゅうこう331060129542144
高出こうしゅつ3410120259084288
最妙さいみょう3510240518168576
泥羅婆ないらば3610481036337152
訶理婆かりば3710962072674304
一動いちどう38101924145348608
訶理蒲かりぼ39103848290697216
訶理三かりさん40107696581394432
奚魯伽けいろか411015393162788864
達攞歩陀たつらほだ421030786325577728
訶魯那かろな431061572651155456
摩魯陀まろだ4410123145302310912
懺慕陀ざんぼだ4510246290604621824
瑿攞陀えいらだ4610492581209243648
摩魯摩まろま4710985162418487296
調伏ちょうぶく48101970324836974592
離憍慢りきょうまん49103940649673949184
不動ふどう50107881299347898368
極量ごくりょう511015762598695796736
阿麼怛羅あまたら521031525197391593472
勃麼怛羅ぼまたら531063050394783186944
伽麼怛羅がまたら5410126100789566373888
那麼怛羅なまたら5510252201579132747776
奚麼怛羅けいまたら5610504403158265495552
鞞麼怛羅べいまたら57101008806316530991104
鉢羅麼怛羅はらまたら58102017612633061982208
尸婆麼怛羅しばまたら59104035225266123964416
翳羅えいら60108070450532247928832
薜羅べいら611016140901064495857664
諦羅たいら621032281802128991715328
偈羅げら631064563604257983430656
窣歩羅そほら6410129127208515966861312
泥羅ないら6510258254417031933722624
計羅けいら6610516508834063867445248
細羅さいら67101033017668127734890496
睥羅へいら68102066035336255469780992
謎羅めいら69104132070672510939561984
娑攞荼しゃらだ70108264141345021879123968
謎魯陀めいろだ711016528282690043758247936
契魯陀けいろだ721033056565380087516495872
摩覩羅まとら731066113130760175032991744
娑母羅しゃもら7410132226261520350065983488
阿野娑あやしゃ7510264452523040700131966976
伽麼羅かまら7610528905046081400263933952
摩伽婆まかば77101057810092162800527867904
阿怛羅あたら78102115620184325601055735808
醯魯耶けいろや79104231240368651202111471616
薜魯婆べいろば80108462480737302404222943232
羯羅波からは811016924961474604808445886464
訶婆婆かばば821033849922949209616891772928
毘婆羅びばら831067699845898419233783545856
那婆羅なばら8410135399691796838467567091712
摩攞羅まらら8510270799383593676935134183424
娑婆羅しゃばら8610541598767187353870268366848
迷攞普めいらふ87101083197534374707740536733696
者麼羅しゃまら88102166395068749415481073467392
馱麼羅だまら89104332790137498830962146934784
鉢攞麼陀はらまだ90108665580274997661924293869568
毘伽摩びかま911017331160549995323848587739136
烏波跋多うはばた921034662321099990647697175478272
演説えんぜつ931069324642199981295394350956544
無尽むじん9410138649284399962590788701913088
出生しゅっしょう9510277298568799925181577403826176
無我むが9610554597137599850363154807652352
阿畔多あばんた97101109194275199700726309615304704
青蓮華しょうれんげ98102218388550399401452619230609408
鉢頭摩はどま99104436777100798802905238461218816
僧祇そうぎ100108873554201597605810476922437632
しゅ1011017747108403195211620953844875264
1021035494216806390423241907689750528
阿僧祇あそうぎ1031070988433612780846483815379501056
阿僧祇転あそうぎてん10410141976867225561692967630759002112
無量むりょう10510283953734451123385935261518004224
無量転むりょうてん10610567907468902246771870523036008448
無辺むへん107101135814937804493543741046072016896
無辺転むへんてん108102271629875608987087482092144033792
無等むとう109104543259751217974174964184288067584
無等転むとうてん110109086519502435948349928368576135168
不可数ふかすう1111018173039004871896699856737152270336
不可数転ふかすうてん1121036346078009743793399713474304540672
不可称ふかしょう1131072692156019487586799426948609081344
不可称転ふかしょうてん11410145384312038975173598853897218162688
不可思ふかし11510290768624077950347197707794436325376
不可思転ふかしてん11610581537248155900694395415588872650752
不可量ふかりょう117101163074496311801388790831177745301504
不可量転ふかりょうてん118102326148992623602777581662355490603008
不可説ふかせつ119104652297985247205555163324710981206016
不可説転ふかせつてん120109304595970494411110326649421962412032
不可説不可説ふかせつふかせつ1211018609191940988822220653298843924824064
不可説不可説転ふかせつふかせつてん1221037218383881977644441306597687849648128

八十華厳

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実叉難陀訳の『華厳経(八十華厳)』(新訳華厳経、唐経、大正蔵279)の第45巻「阿僧祇品第三十」には、右表に示した命数が記述されている[13][14]

105洛叉、100洛叉(107)を倶胝(くてい)とし、倶胝以上を上数として123の命数が列挙されている。

最大の命数である不可説不可説転

という巨大な数となる。

クッキークリッカーの日本語バージョンの一つでは、「恒河沙」までは一般的な方式の命数法となっているが、それより先は独自の方式の命数法を採用している。具体的には、一般的な方式の「阿僧祇」「那由他」「不可思議」「無量大数」は登場せず、一般的な方式なら「阿僧祇」にあたる位置に八十華厳の数詞の「頻波羅」が使われており、そこから先は「矜羯羅」「阿伽羅」を採用している。なお「阿伽羅」の次の八十華厳の数詞は「最勝」であるが、これはこのゲームで扱える数値の限界を超えてしまうため、このゲームでは事実上「阿伽羅」が日本語バージョンの最高の単位となっている。

六十華厳

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東晋仏駄跋陀羅訳の『華厳経(六十華厳)』(旧訳華厳経、晋経、大正蔵278)の第29巻「心王菩薩問阿僧祇品第二十五」には、上記の命数法とは異なる命数が記述されている[15][16]

1010 を拘梨とし、拘梨以上を上数として121の命数が列挙されている。

最大の命数である不可説転転は という巨大な数となる。

四十華厳

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の般若三蔵訳の『華厳経(四十華厳)』(貞元経、大正蔵293)の第10巻「入不思議解脱境界普賢行願品」には、上記の命数法とは異なる命数が記述されている[17][18]

105洛叉、100洛叉(107)を倶胝とし、倶胝以上を上数として144の命数が列挙されている。

最大の命数である不可説不可説転 という巨大な数となる。

これら3つの華厳経では、八十華厳・四十華厳の洛叉は別として、他はいずれも上数で2乗すると次の単位になるため、二重指数関数に当たる。もっとも、これらは実用のものではなく、計算もできないほど大きな数を示して悟り功徳の大きさを表したものである。

大和言葉(和語)によるひふみ詞命数法

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大和言葉(和語)によって巨大な数を表す方式には、ひふみ詞によるものがあり、1038の桁まで表せる。ただし実際には、「よろず(ろ)」より上が命数法として使用されることはほとんどない。

大和言葉(和語)命数法
名称
ひとつ(ひ)1(一)
ふたつ(ふ)2(二)
みっつ(み)3(三)
よっつ(よ)4(四)
いつつ(い)5(五)
むっつ(む)6(六)
ななつ(な)7(七)
やっつ(や)8(八)
ここのつ(こ)9(九)
とお(と)10(十)
もも(も)100(百)
1,000(千)
よろず(ろ)10,000(万)
100,000(十万)
1,000,000(百万)
10,000,000(千万)
100,000,000(一億)
109(十億)
1010(百億)
1011(千億)
1012(一兆)
1013(十兆)
1014(百兆)
1015(千兆)
1016(一京)
1017(十京)
1018(百京)
1019(千京)
1020(一垓)
1021(十垓)
1022(百垓)
1023(千垓)
1024(一𥝱)
1025(十𥝱)
1026(百𥝱)
1027(千𥝱)
1028(一穣)
1029(十穣)
1030(百穣)
1031(千穣)
1032(一溝)
1033(十溝)
1034(百溝)
1035(千溝)
1036(一澗)
1037(十澗)
1038(百澗)

小数の命数法

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中国に由来する漢数字では、小数については、一桁(0.1倍)ごとに新たな名前を付ける下数が行われている。これに対し、ヨーロッパ言語やインドにおいては分数の表記としては、half や quarter、en:Roman numerals#Fractions のような表現にはあるが、10進法の少数について桁ごとに名称を付すことは行われていない。漢数字については、位の小さなものの名称については時代や地域、また書物によって相違がある。例えば朱世傑算学啓蒙中国語版』では沙以下は万万進としているほか、「虚空」「清浄」を「虚」「空」「清」「浄」の4つの別の名とするなどの違いがある。以下は一例である。

小数の命数法
呼称備考
(いち)100
(ぶ)10−1
(釐)(りん)10−2
(毫)(もう)10−3
(絲)(し)10−4
(こつ)10−5
(び)10−6
(せん)10−7
(しゃ)10−8
(じん)10−9
(あい)10−10
(びょう)10−11
(ばく)10−12
模糊(もこ)10−13
逡巡(しゅんじゅん)10−14
須臾(しゅゆ)10−15
瞬息(しゅんそく)10−16
弾指(だんし)10−17
刹那(せつな)10−18
六徳(りっとく)10−19
虚空(こくう)、空虚(くうきょ)10−20「虚空」「清浄」を「虚」「空」「清」「浄」と分けた場合、「虚」10−20「空」10−21
清浄(せいじょう)10−21「虚空」「清浄」を「虚」「空」「清」「浄」と分けた場合、「清」10−22「浄」10−23

このうち、『塵劫記』では埃以上のみが紹介されている[19]

実用で用いられるのは毛あるいは糸くらいまでであり、それ以下については名前がついているだけで実際にはほとんど用いられない。なお、「六徳」は「徳」の6倍という意味ではなく、「六徳」で一つの単位である。

実際に桁を連ねるときは、「二三分四厘」のように1の位の後に「基準単位(ここでは「寸」)」をつける。現代的な表現が「2.34」のように最後に「基準単位」を付けるのとは異なる。

日本語

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現代の日本では、上記の小数の命数法は、野球選手の打率や守備率、スポーツチームの勝率、レートまたは割引を表す場合によく用いられる。「36度5分」(36.5 ℃)のように、温度を表す時にも、慣用表現 (「五分五分の勝負」、「九分九厘」、「七分袖」など) でも用いられる。

かつては尺貫法において、基準となる計量単位)とともによく用いられていた(分 (数)#計量単位など)。現代では例えば 36.5 度と表記するが、伝統的には36度5分というように基準単位(ここでは「度」)の後に小数の数詞(「分」)を付して記述する。長さの場合は、2寸3分4厘 のようになる。 意味は 2.34寸と同じである。

また、と用いられることも多い。例えば、2割4分7厘は、分は割の1/10、厘は割の1/100であるので、現代風に書くと、2.47 割ということになる。

割と共に用いる場合の誤解

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基準単位として「」を使う場合は「2割4分7厘」のようになることから、「分は全体の 1/100、厘は全体の 1/1000 」と勘違いをされることがある。しかし、これは「2.47割」の意味であって、「分は割の 1/10、厘は割の 1/100」であって、長さの場合の「2寸3分4厘 = 2.34寸」と同様の表現である。

上記の勘違いを生ずる原因は、割を用いる場合に割そのものが 1/10 を意味するために、「分が全体の 1/100、厘が全体の 1/1000 」と誤解するからである。分、厘、毛などの数詞は、「基準単位」(例えば、寸、割、匁など)の小数を意味することを理解しておく必要がある。

小数点と3桁区切り

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各国の小数点表示
ピリオド コンマ インド数字 不明

小数点には地域(言語)によって、ピリオド(.)又はコンマ(,)が使われる(小数点#二つの方式)。日本ではピリオドが使われることがほとんどである。

3桁区切りについては、国際機関では小数点を基準に3桁毎にコンマ(,)やピリオド(.)を入れることを禁止しており、その代わりにスペース(通常は半角スペース(en:thin space))を入れると規定している。これは小数点にピリオドとコンマの両方が使われていることから、3桁毎にコンマやピリオドを入れると重大な誤読を招くおそれがあるからである。

国際単位系国際文書 (SI文書)の要約は次のように記している。

数字の桁数が多い場合は、読み易くするために、小数点から3桁ごとにグループ分けすることが習慣化している。これは必須ではないが、このようにされることが多く、一般的に分かり易い。この書式を使う場合、3桁ごとのグループ分けには空白のみを用い、点やカンマを使ってはならない。[20] 


short scale(英語など)での呼び方
short scale対応する漢数字補足
1one1
102hundred100
103thousand1000
106million百万1000×1000 (=1,000,000)
109billion十億1000×10002 (=1,000,000,000)
1012trillion一兆1000×10003 (=1,000,000,000,000)
1015quadrillion千兆1000×10004 (=1,000,000,000,000,000)
1018quintillion百京1000×10005
1021sextillion十垓1000×10006
1024septillion一𥝱1000×10007
1027octillion千𥝱1000×10008
1030nonillion百穣1000×10009
1033decillion十溝1000×100010
1036undecillion一澗1000×100011
1039duodecillion千澗1000×100012
1042tredecillion百正1000×100013
1045quattuordecillion十載1000×100014
1048quindecillion一極1000×100015
1051sexdecillion千極1000×100016
1054septendecillion百恒河沙1000×100017
1057octodecillion十阿僧祇1000×100018
1060novemdecillion一那由他1000×100019
1063vigintillion千那由他1000×100020
1066unvigintillion百不可思議1000×100021
1069duovigintillion十無量大数1000×100022
1072tresvigintillion※※※1000×100023
1093trigintillion※※※1000×100030
10100googol※※※10×100033
10123quadragintillion※※※1000×100040
long scale での呼び方
long scale対応する漢数字補足
106million百万(1 000 000)1
1012billion一兆(1 000 000)2 (=1 000 000 000 000)
1018trillion百京(1 000 000)3 (=1 000 000 000 000 000 000)
1024quadrillion一𥝱(1 000 000)4 (=1 000 000 000 000 000 000 000 000)
1030quintillion百穣(1 000 000)5 (=1 000 000 000 000 000 000 000 000 000 000)
1036sextillion一澗(1 000 000)6 (=1 000 000 000 000 000 000 000 000 000 000 000 000)
1042septillion百正(1 000 000)7
1048octillion一極(1 000 000)8
1054nonillion百恒河沙(1 000 000)9
1060decillion一那由他(1 000 000)10
1066undecillion百不可思議(1 000 000)11
1072duodecillion※※※(1 000 000)12

脚注

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  1. ^ 「命数-法」『新明解国語辞典 第六版』三省堂2005年
  2. ^ wikisource:zh:五經算術:按黃帝為法、數有十等。 及其用也、乃有三焉。十等者、謂億、兆、京、垓、秭、壤、溝、澗、正、載也。三等者、謂上、中、下也。其下數者、十十變之。若言十萬曰億、十億曰兆、十兆曰京也。中數者、萬萬變之。若言萬萬曰億、萬萬億曰兆、萬萬兆曰京也。上數者、數窮則變。若言萬萬曰億、億億曰兆、兆兆曰京也。若以下數言之、則十億曰兆;若以中數言之、則萬萬億曰兆;若以上數言之、則億億曰兆。
  3. ^ 山崎与右衛門; 竹内乙彦; 鈴木久男 (1968). 日本のそろばん. 暁出版. pp. 151, 168. NDLJP:1384357. "日本珠算史年表" 
  4. ^ 新編塵劫記第3巻”. p. 4. doi:10.11501/3508170. 2018年3月2日閲覧。第一:大数の名の事
  5. ^ H. W. Fowler "Modern English Usage"
  6. ^ Décret 61-501, page 4587, note 3 and erratum on page 7572
  7. ^ [1]
  8. ^ Direttiva CE 1994 n. 55, page 12
  9. ^ [2]
  10. ^ 英語版のLong and short scales#Using neitherより
  11. ^ BBC: GCSE Bitesize – The origins of the universe”. BBC. 2011年7月28日閲覧。
  12. ^ দাস, জ্ঞানেন্দ্রমোহন (1937). “পদ্ম; শঙ্খ”. বাঙ্গলা ভাষার অভিধান (2nd ed.). কলিকাতা: দি ইণ্ডিয়ান্ পাব্লিশিং হাউস. p. 1264, 1920 (ベンガル語)
  13. ^ SAT大正新脩大藏經テキストデータベース2018(T0279)”. SAT大正新脩大藏經テキストデータベース. 2019年9月19日閲覧。
  14. ^ T10n0279_045 大方廣佛華嚴經 第45卷”. CBETA 漢文大藏經. 2019年9月19日閲覧。
  15. ^ SAT大正新脩大藏經テキストデータベース2018(T0278)”. SAT大正新脩大藏經テキストデータベース. 2019年9月19日閲覧。
  16. ^ T09n0278_029 大方廣佛華嚴經 第29卷”. CBETA 漢文大藏經. 2019年9月19日閲覧。
  17. ^ SAT大蔵経テキストデータベース2018(T0293)”. SAT大正新脩大藏經テキストデータベース. 2019年9月19日閲覧。
  18. ^ T10n0293_010 大方廣佛華嚴經 第10卷”. CBETA 漢文大藏經. 2019年9月19日閲覧。
  19. ^ 新編塵劫記第3巻”. p. 4. doi:10.11501/3508170. 2018年3月2日閲覧。第二:小数の名の事
  20. ^ 国際単位系(SI)第9版(2019)要約 日本語版 p.192、国際単位系(SI)基本単位の定義改定と計量標準、2020年3月、 国立研究開発法人産業技術総合研究所 計量標準総合センター

関連項目

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外部リンク

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