歯茎側面吸着音

歯茎側面吸着音(しけいそくめんきゅうちゃくおん)は、子音のひとつ。

歯茎側面吸着音
ǁ
IPA 番号180
IPA 表記[ǁ]
IPA 画像
UnicodeU+01C1
文字参照ǁ
JIS X 0213
X-SAMPA|\|\
Kirshenbauml!
音声サンプル

国際音声記号では双柱[ǁ]で表わされる。かつては[ʖ]が用いられていたが、1989年に取り消された[1]

概要

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歯茎側面吸着音の発音は歯吸着音のものに類似しているが、舌の側面の、奥歯に接している部分を下げることで開放する[2][3]

国際音声記号の表では「歯茎側面吸着音」と呼んでいるが、実際には閉鎖は歯茎だけでなく歯や後部歯茎も使われる[3]

西ヨーロッパでは非言語音として、馬を走りださせるためにこの音を用いる[2][4]

吸着音は本質的に軟口蓋音または口蓋垂音との二重調音であり、国際音声記号では[k͡ǁ]のように書くか、あるいはタイを省略して[kǁ]のように書くことができる。同様に帯気音は[kǁʰ]、有声音は[ɡǁ]、鼻音は[ŋǁ]のように書かれる[5]

ズールー語およびコサ語の正書法では「x」と書かれる[5](xh [kǁʰ], gx [ɡǁ], nx [ŋǁ])。コサ語の言語名「Xhosa」[kǁʰoːsa]にも使われている。

言語例

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  • ズールー語isinxele [ìsìŋǁéːlè] 「左手」[6]
  • コサ語:ukuxhoba [ukúkǁoɓa] 「武装する」[5][7]
  • ナマ語[kǁaros] 「文章」、[kǁʰoas] 「打つ」、[ŋ̥ǁʰaos] 「料理する場所」、[ŋǁaes] 「向けること」、[kǁˀaos] 「贈り物を断わる」[8]

脚注

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  1. ^ プラム&ラデュサー(2003) p.214
  2. ^ a b Ladefoged (2001) p.119
  3. ^ a b Ladefoged & Maddieson (1996) pp.255-256
  4. ^ プラム&ラデュサー(2003) pp.214,225
  5. ^ a b c Ladefoged (2001) p.121
  6. ^ Ladefoged (2001) pp.264-265
  7. ^ Handbook of the International Phonetic Association. Cambridge University Press. (1999). ISBN 0521652367  (chapter 3.1)
  8. ^ 外部リンクの Vowels and Consonants を参照

参考文献

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外部リンク

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子音
肺臓気流
両唇唇歯歯茎後部歯茎そり舌硬口蓋軟口蓋口蓋垂咽頭声門
破裂pb()()()()tdʈɖcɟkɡqɢ( ʡˤ)ʔ
()m(ɱ̊)ɱ(n̪̊)()()nɳɲŋɴ
ふるえ(ʙ̥)ʙ()rʀ
はじき(ⱱ̟)ɾɽ(ɟ̆)(ɢ̆)(ʡ̆)
摩擦ɸβfvθðszʃʒʂʐçʝxɣχʁħʕhɦ
側面摩擦ɬɮ
接近(β̞)(ʋ̥)ʋ(ɹ̥)ɹɻjɰ
側面接近()lɭʎʟ
非肺臓気流
吸着ʘǀǃ𝼊ǂǁ(ʞ)
入破ɓɗ̪ɗ()ʄɠʛ
放出(t̪ʼ)ʈʼc’()
その他
同時調音ʍwɥɕʑɧ
(k͡p)(ɡ͡b)(ŋ͡m)
喉頭蓋音ʜʢʡ
舌唇音()()()(θ̼)(ð̼)
その他側面音ɺ(ɭ̆)(ɫ)
破擦音p͡ɸb͡βp̪͡fb̪͡vt͡θd͡ðt͡sd͡zt͡ʃd͡ʒʈ͡ʂɖ͡ʐt͡ɕd͡ʑc͡çɟ͡ʝk͡xɡ͡ɣq͡χɢ͡ʁt͡ɬd͡ɮʔ͡h
記号が二つ並んでいるものは、左が無声音、右が有声音。網掛けは調音が不可能と考えられる部分。
丸括弧内はIPA子音表(2005年改訂版)に記載されていないもの。
国際音声記号 - 子音