UCIワールドツアー

UCIワールドチームから転送)

UCIワールドツアー(UCI WorldTour)は、2011年シーズンより開始された自転車ロードレースの年間シリーズ戦。

歴史

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2005年より開始されたUCIプロツアーは、国際自転車競技連合(UCI)主導による規範的な制度という側面が強く、アモリ・スポル・オルガニザシオン(ASO)ら、グランツール主催者と齟齬をきたし、2008年の同シリーズ戦では、ツール・ド・フランスジロ・デ・イタリアブエルタ・ア・エスパーニャをはじめとする前年までの、11の対象レースが離脱する騒動になった。

これに対抗すべく同年、UCIは仮称として、同年開催の北京オリンピック・個人ロードレース世界選手権・個人ロードレースツール・ド・フランスの3レースを、UCIワールドツアーとする案を出したが、ASOらは、ジロ・デ・イタリアとブエルタ・ア・エスパーニャなどのレースが、大陸別シリーズ戦であるUCIヨーロッパツアーに組み入れられることに対して猛反発し、結局、ツール・ド・フランスら11レースは、ロードレースの年間シリーズ戦に全く加わらず、単発的なロードレース大会として開催された。

こうした事態を打開するべく、同年8月に行われたUCIとASOの親会社であるエディシオン・フィリップ・アモリ(EPA)との間で、歴史的和解が行われ、2009年シーズンからは、2007年までのUCIプロツアーにおけるシリーズ戦と類似した年間シリーズ戦である、UCIワールドカレンダーとして再出発することになったが、UCIプロチームが優先的に参加することが可能なUCIプロツアー(UPT)は引き続き維持される(当初14レース、2010年シーズンに2レース追加される)一方、UCIプロチームに限らず、主催者の裁量によって参加チームを決めることが可能な、グランツール主催者が行う10レースについては「ヒストリカルレース」(HIS)に分類され、UCIプロツアーとはいまだ袂を分かつ形となったことから、2種類のシリーズ戦が混在するいびつさが残っていた。

2011年シーズンよりUCIは、UCIプロツアーの発展的解消に伴い、「ヒストリカルレース」という分類もなくしたUCIワールドツアーを実施することになった。なお、ポイント配分等についてはUCIワールドカレンダーとほぼ一緒である。

一方で、UCIプロチームでなければ、当該シリーズ戦における出場は著しく制約されることになるため、UCIによるチームの選定は注目を集めた。当初UCIプロチーム参加が予定されていたジェオックス - TMCとコフィディスは除外[1]され、財政的な問題が懸念されていたペガサススポーツはプロフェッショナルコンチネンタルチームから除外[2]された。

また、ワールドツアーという観点に基づき、ジャパンカップサイクルロードレースが1996年のみUCI・ロードワールドカップに取り入れられて以来となるアジア地域での世界ツアー戦、ツアー・オブ・北京を2011年より開催したが、2014年で終了となった。2012年からは新設レース、ツアー・オブ・杭州の開催が予定されていた[3]が、同年8月28日、開催準備の不整備等の理由により、UCIは2012年の開催は見送ることを決定[4]、その後も開催の見送りが続き、結局一度も開催されることのないままに終わった。

2015年、チームの最高カテゴリーの名称が「UCIプロチーム」から「UCIワールドチーム」へと変更された。

2017年、下位カテゴリーであるUCIコンチネンタルサーキットの超級(HC)レースから10レースが昇格したほか、新たに中国でのレースツアー・オブ・広西が加わり全27レースだった2016年から大幅にレース数が増やされ、全38レースとなった。ただし、2017年についてはツアー・オブ・カタールの開催が資金難により見送られたため、実質上は全37レースとなった。

対象レースとポイント配分

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2023年からの対象レースとポイント配分

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2023年からは、格の高いレースにより高いポイントを配布する制度の改正が行われた[5][6]

2017年からの対象レースとポイント配分

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レースカテゴリーライセンス獲得年[7]
ツアー・ダウンアンダー3 オーストラリア2008
カデル・エヴァンス・グレートオーシャン・ロードレース5 オーストラリア2017
ツアー・オブ・カタール5 カタール2017
オムロープ・ヘット・ニウスブラット5 ベルギー2017
アブダビ・ツアー5 アラブ首長国連邦2017
ストラーデ・ビアンケ5 イタリア2017
パリ〜ニース3 フランス2005
ティレーノ〜アドリアティコ3 イタリア2005
ミラノ〜サンレモ3 イタリア2005
デ・パンネ3日間5 ベルギー2019
カタルーニャ一周4 スペイン2005
E3ビンクバンク・クラシック4 ベルギー2012
ヘント〜ウェヴェルヘム3 ベルギー2005
ドワルス・ドール・フラーンデレン5 ベルギー2017
ロンド・ファン・フラーンデレン3 ベルギー2005
バスク一周4 スペイン2005
パリ〜ルーベ3 フランス2005
アムステルゴールドレース3 オランダ2005
ツアー・オブ・ターキー5 トルコ2017
フレッシュ・ワロンヌ4 ベルギー2005
リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ3 ベルギー2005
ツール・ド・ロマンディ3 スイス2005
エシュボルン=フランクフルト5 ドイツ2017
ジロ・デ・イタリア2 イタリア2005
ツアー・オブ・カリフォルニア5 アメリカ合衆国2017
クリテリウム・デュ・ドフィネ3 フランス2005
ツール・ド・スイス3 スイス2005
ツール・ド・フランス1 フランス2005
クラシカ・サンセバスティアン4 スペイン2005
ツール・ド・ポローニュ4 ポーランド2005
プルデンシャル・ライドロンドン=サリー・クラシック5 イギリス2017
ビンクバンク・ツアー4 ベルギー / オランダ2005
ブエルタ・ア・エスパーニャ2 スペイン2005
ユーロアイズ・サイクラシックス4 ドイツ2005
ブルターニュ・クラシック4 フランス2005
グランプリ・シクリスト・ド・ケベック3 カナダ2010
グランプリ・シクリスト・ド・モンレアル3 カナダ2010
ジロ・ディ・ロンバルディア3 イタリア2005
ツアー・オブ・広西5 中国2017

与えられるポイント

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2016年までのポイント配分

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ポイント配分自体は2010年まで実施されていたUCIワールドカレンダーとほぼ同一だが、UCIプロフェッショナルコンチネンタルチームに所属する選手はポイント対象から除外される点が異なっている(この点は2008年まで実施されていたUCIプロツアーと類似している。)。

1位2位3位4位5位6位7位8位9位10位11位12位13位14位15位16位17位18位19位20位
総合成績(A)200150120110100908070605040302420161210864
区間成績(A)2010642
総合成績(B)170130100908070605244383226221814108642
区間成績(B)168421
総合成績(C)10080706050403020104
区間成績(C)64211
総合成績(D)806050403022141062

※太字はステージレース

チームのカテゴリー

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UCIワールドチーム (UCI WorldTeam)
ワールドツアー全レースに出場義務がある。人数制限はあるが、コンチネンタルサーキットのクラスHC、クラス1のレースにも出場可。ただし、出場してもポイントはつかない。2014年までの名称はUCIプロチーム (UCI ProTeam)。
UCIプロ・チーム (UCI Pro Team)
コンチネンタルサーキットを主戦場とする。UCIに1年ごとに認定される必要がある。
コンチネンタルサーキット→クラスHC、クラス1、クラス2(ワールドツアーへは招待で出場可能。ただし、ポイントはつかない。ヨーロッパのクラス2レースには主催国チームでないと出場できない。)
コンチネンタルチーム (UCI Continental team)
プロとノンプロの混成となる。チームを主に構成する選手の出身国の連盟から認可を受ける。
コンチネンタルサーキット→クラスHC、クラス1、クラス2(ただし、ヨーロッパのHCレースには主催国チームでないと出場できない。)
ナショナルチーム
コンチネンタルサーキット→クラス1、2
地域チーム/クラブチーム
コンチネンタルサーキット→クラス2のみ
UCIワールドツアーコンチネンタルサーキットHC(超級)クラスコンチネンタルサーキット1クラスコンチネンタルサーキット2クラス
UCIワールドチーム×
プロフェッショナルコンチネンタルチーム
コンチネンタルチーム×
ナショナルチーム××
地域チーム/クラブチーム×××

◎・・・出場の義務がある○・・・出場可能▲・・・出場可能だが、ヨーロッパコンチネンタルツアーの場合は開催国のチームのみ出場可能△・・・ワイルドカードの招待により出場可能×・・・出場できない

参加チーム

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現在のUCIワールドチーム(2024年)

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チーム名称所属国参加シーズン参加年数過去のチーム名
デカトロン・AG2R・ラ・モンディアル フランス2009–14AG2R・ラ・モンディアル (2009–2020)、AG2R・シトロエン・チーム (2021-2023)
アスタナ・カザクスタン・チーム カザフスタン2009–14アスタナ・プロチーム (2009–2020), アスタナ・プレミアテック (2021)
EFエデュケーション・イージーポスト アメリカ合衆国2009–14ガーミン・スリップストリーム (2009), ガーミン・トランジションズ (2010), ガーミン・サーヴェロ (2011), ガーミン・バラクーダ (2012), ガーミン・シャープ (2012–2014), チーム・キャノンデール・ガーミン (2015), キャノンデール・プロサイクリング・チーム (2016), キャノンデール・ドラパック・プロサイクリング・チーム (2016–2017), チームEFエデュケーションファースト・ドラパック・p/bキャノンデール (2018), EFエデュケーションファースト・プロサイクリング (2019), EFプロサイクリング (2020), EFエデュケーション・NIPPO (2021)
モビスター・チーム スペイン2009–14ケス・デパーニュ (2009–2010)
スーダル・クイックステップ ベルギー2009–14クイックステップ (2009–2011), オメガ・ファーマ - クイック・ステップ (2012–2014), エティックス・クイックステップ (2015–2016), クイックステップ・フロアーズ (2017–2018), ドゥクーニンク・クイックステップ (2019–2021), クイックステップ・アルファビニール (2022)
チーム・ヴィスマ・リースアバイク オランダ2009–14ラボバンク (2009–2012), ブランコ・プロサイクリング・チーム (2013), ベルキン・プロサイクリング・チーム (2013–2014), チーム・ロットNL・ユンボ (2015–2018), チーム・ユンボ・ヴィスマ (2019-2023)
UAE チーム・エミレーツ イタリア (2009–2016)

アラブ首長国連邦 (2017–2022)

2009–14ランプレ-NGC (2009), ランプレ-ファルネーゼ・ヴィーニ (2010), ランプレ-ファルネーゼ (2010), ランプレ・ISD (2011–2012), ランプレ・メリダ (2013–2016), UAEアブダビ (2017)
グルパマ・FDJ フランス2009–2010, 2012–13ラ・フランセーズ・デ・ジュー (2009–2010), FDJ (2010, 2013, 2015–2018), FDJ・ビッグマット (2012), FDJ.fr (2013–2014)
イネオス・グレナディアス 英国2010–202313チーム・スカイ (2010–2019), チーム・イネオス (2019–2020)
リドル・トレック ルクセンブルク (2011–2013)

アメリカ合衆国 (2014–2022)

2011–12レオパード・トレック (2011), レディオシャック・ニッサン (2012), レディオシャック・レオパード・トレック (2013), トレック・ファクトリー・レーシング (2014–2015), トレック・セガフレード (2016-2023)
チーム・ジェイコ・アルウラー オーストラリア2012–11グリーンエッジ・サイクリング (2012), オリカ・グリーンエッジ (2012–2016), オリカ・バイクエクスチェンジ (2016), オリカ・スコット (2017), ミッチェルトン・スコット (2018–2020), チーム・バイクエクスチェンジ (2021), チーム・バイクエクスチェンジ・ジェイコ (2022)
チームDSM・フィルメニッヒ・ポストNL オランダ (2013–2014, 2022)

ドイツ (2015–2021)

2013–10アルゴス・シマノ (2013), チーム・ジャイアント=シマノ (2014), チーム・ジャイアント=アルペシン (2015–2016), チーム・サンウェブ (2017–2020), チームDSM (2021-2023), チームDSMフィルメニヒ (2023)
バーレーン・ヴィクトリアス バーレーン2017–6バーレーン・メリダ プロ・サイクリングチーム (2017–2019), バーレーン・マクラーレン (2020)
レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ ドイツ2017–6ボーラ=ハンスグローエ (2017-2024)
コフィディス フランス2009, 2020–4
アンテルマルシェ・ワンティ ベルギー2021–2
アルケア・B&Bホテルズ フランス2023-1
アルペシン・ドゥクーニンク英語版 ベルギー2023-1

以前参戦していたUCIワールドチーム

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チーム名称所属国参加シーズン参加年数過去のチーム名
ロット・ソウダル ベルギー2009–202214サイレンス・ロット (2009), オメガファーマ・ロット (2010–2011), ロット・ベリソル (2012–2014)
イスラエル・プレミアテック イスラエル2020–20223イスラエル・スタートアップネイション (2020-2021)
チーム・クベカ・ネクストハッシュ 南アフリカ共和国2016–20216チーム・ディメンションデータ (2016–2019), NTTプロ・サイクリング (2020), チーム・クベカ・アソス (2021)
CCCチーム アメリカ合衆国 (2011–2018)

ポーランド (2019–2020)

2011-202010BMC・レーシングチーム (2011–2018)
チーム・カチューシャ・アルペシン ロシア (2009–2016)

スイス (2017–2019)

2009–201911チーム・カチューシャ (2009–2016)
ティンコフ  デンマーク (2009–2013)

ロシア (2014–2016)

2009–20168チーム・サクソバンク (2009–2010, 2012), チーム・サクソバンク - サンガード (2011), チーム・サクソバンク (2012), チーム・サクソ=ティンコフ (2013), ティンコフ=サクソ (2014–2015)
IAMサイクリング スイス2015–20162
キャノンデール・プロサイクリング イタリア2009–20146リクイガス (2009), リクイガス・ドイモ (2009–2010), リクイガス・キャノンデール (2011–2012)
チーム・ヨーロッパカー フランス2009, 20142Bbox ブイグテレコム (2009)
エウスカルテル・エウスカディ スペイン2009–20135
ヴァカンソレイユ・DCM オランダ2011–20133
チーム・レディオシャック アメリカ合衆国2010–20112
チーム・HTC - ハイロード アメリカ合衆国2009–20113チーム・コロンビア - ハイロード (2009), チーム・コロンビア - HTC (2009), チーム・HTC - コロンビア (2010)
フットオン・セルベット・フジ スペイン2009–20102フジ・セルベット (2009)
チーム・ミルラム ドイツ2009–20102

日程

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結果

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年次個人総合成績

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1位2位3位4位5位
2011フィリップ・ジルベールカデル・エヴァンスアルベルト・コンタドール[9]ホアキン・ロドリゲスミケーレ・スカルポーニ
2012ホアキン・ロドリゲスブラッドリー・ウィギンストム・ボーネンヴィンチェンツォ・ニバリアレハンドロ・バルベルデ
2013クリス・フルームアレハンドロ・バルベルデペーター・サガンヴィンチェンツォ・ニバリ
2014アレハンドロ・バルベルデアルベルト・コンタドールサイモン・ジェランルイ・コスタ
2015ホアキン・ロドリゲスナイロ・キンタナアレクサンダー・クリストフファビオ・アル
2016ペーター・サガンナイロ・キンタナクリス・フルームアレハンドロ・バルベルデアルベルト・コンタドール
2017フレフ・ファン・アヴェルマートクリス・フルームトム・デュムランペーター・サガンヴィンチェンツォ・ニバリ
2018サイモン・イェーツペーター・サガンアレハンドロ・バルベルデゲラント・トーマスフレフ・ファン・アヴェルマート
2019プリモシュ・ログリッチジュリアン・アラフィリップヤコブ・フルサンエガン・ベルナルアレハンドロ・バルベルデ
2020タデイ・ポガチャルワウト・ファン・アールトマチュー・ファン・デル・プールヤコブ・フルサン
2021タデイ・ポガチャルワウト・ファン・アールトプリモシュ・ログリッチジュリアン・アラフィリップエガン・ベルナル
2022レムコ・エヴェネプールヨナス・ヴィンゲゴーアレクサンドル・ウラソフ

歴代優勝選手・チーム・国

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優勝選手優勝チーム優勝国
2011 フィリップ・ジルベール オメガファーマ・ロット イタリア
2012 ホアキン・ロドリゲス チーム・スカイ イギリス
2013 モビスター・チーム スペイン
2014 アレハンドロ・バルベルデ
2015
2016 ペーター・サガン
2017 フレフ・ファン・アヴェルマート チーム・スカイ ベルギー
2018 サイモン・イェーツ クイックステップ・フロアーズ
2019 プリモシュ・ログリッチ ドゥクーニンク・クイックステップ
2020 チーム・ユンボ・ヴィスマ フランス
2021 タデイ・ポガチャル ドゥクーニンク・クイックステップ ベルギー
2022 チーム・ユンボ・ヴィスマ

関連項目

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脚注

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  1. ^ UCI announce 18 ProTeams for 2011 - Cyclingnews.com 2010年11月22日付記事(英語)
  2. ^ Reactions to Pegasus news: Anger and resignation - Cyclingnews.com 2010年12月21日付記事(英語)
  3. ^ 中国第2のワールドツアーレース ツアー・オブ・杭州が10月開催 - シクロワイアード 2012年6月27日付記事
  4. ^ UCI postpones Tour of Hangzhou - cyclingnews.com 8月28日付(英語)
  5. ^ 主要ワールドツアーレースが高配点に UCIが2023年のUCIポイント配分を変更 各チームの主要レースへの注力を促す狙い cyclowired.jp
  6. ^ Modification of points scale for men’s events in UCI International Road Calendar UCI
  7. ^ 2010年以前はUCIプロツアーのライセンス。
  8. ^ 2014年で終了。
  9. ^ ドーピング違反により成績抹消

外部リンク

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